顎関節症という症状をご存じですか。
歯科の二大疾患として、虫歯と歯周病があげられますが、最近では、顎関節症が、それらに続く第三の疾患と言われています。

顎関節症は、口を開け閉めするときにあごが痛い・音がする、また口が開かないという慢性疾患の総称です。
子供から大人まで年代層を問わずに幅広く発生しますが、20～30歳代の女性に多い傾向があります。

顎関節症はそんなに珍しい病気ではありません。
日常生活に支障をきたす症状もありますが、顎関節症をよく知り、上手く付き合っていけば、そんなに恐い疾患ではありません。

顎関節症の治療に歯列矯正が有効とされるケースも多くあります。
具体的にはどのように治療が進められるのでしょうか。
このページでは、顎関節症について、また顎関節症と歯列矯正について、見ていきましょう。

目次

・顎関節症とは？

・顎関節症の原因は？

・歯列矯正が有効な理由と注意点

・どんな治療法があるの？

・顎関節症の治療症例

・顎関節症の相場費用と保険適用

・顎関節症のよくある質問

顎関節症とは？

・口を開閉すると顎が痛い

・顎が動くと音がする　(関節雑音)

・口を大きく開けられない　(開口障害)

これらの症状がある場合は、顎関節症の可能性があります。
あごの骨、いわゆる顎関節は、耳の穴の前方1cmくらいのところにあるので、あごを動かした時の音がよく聞こえます。
顎関節が動くと「コキッ」「カクッ」「ミシッ」「パキン」などの気になる音がすると、何かしら症状があるかもしれません。

そのままにせず、まずはしっかりと歯科医院で検査をして、症状を確認しましょう。

顎関節症の原因は？

顎関節症は、顎や顔に不快感や痛みを引き起こす症状を総称した言葉です。
顎関節は、下顎と頭蓋骨をつなぐ重要な部分であり、通常であればスムーズに動くことが求められますが、何らかの原因でその動きに問題が生じると、顎関節症が引き起こされます。

 

少し具体的にお話すると、顎関節症は、顎の関節やその周囲の筋肉の異常により起こる疾患で、自然に治る軽症のものから、日常生活に支障をきたす重度なものまで、様々な状態があります。

顎の関節は、耳の穴のすぐ前にあり、頭の骨と下顎の骨で構成され、その間にある「関節円板」という繊維軟骨がクッションの役割を果たしています。

骨どうしが直接こすれずにスムーズに動くのは、関節円板が、間で潤滑の役割を担っているからです。また、顎関節の周りにある筋肉も関節の動きをサポートしています。

顎関節症にも関節（関節円板）そのものに問題がある場合と、周囲の筋肉が痛んでいる場合の２種類があります。

こうした、筋肉や顎関節が何らかの原因でダメージを受けると顎関節症が起こります。

顎関節症になる要因はいくつかあり、それらが積み重なって、ある限界を超えてしまった時に発症します。
要因となる代表的なものとしては、歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせの異常、生活習慣、ストレス、外傷などがあります。
中でも、ストレスが一因とされることが多いのですが、ストレスがかかると、無意識に顎を噛みしめたり、歯ぎしりをしたりすることがあります。
これが顎関節に負担をかけ、痛みを引き起こしたり、顎の動きが制限されてしまうことがあります。

また、噛み合わせの問題や、歯の位置、歯並びの悪さも、顎関節症になる原因として挙げられます。
これらは、歯科治療によるアプローチが必要となることが多いです。

 

具体的な症状については、口を開けるときの痛みや開口障害、さらには顎がカクカクと鳴る感覚がよく見られます。
他にも、頬や耳の周辺に痛みを感じる場合もあり、日常生活において、顎を使う際に不快感をもたらします。
特に、食事中に痛みや違和感を感じることは、食事そのものを楽しむことができなくなるため、生活の質を下げる要因となります。

 

さらに、顎関節症は自律神経に影響を与えるため、頭痛や肩こり、さらには疲れやすくなるといった症状を伴うこともあります。
これにより、日常生活や仕事において集中力が低下することがあり、精神的なストレスをさらに増加させる要因にもなります。

 

そのため、顎関節症を抱える方は、まず自分の症状や状況をしっかりと認識し、専門の医療機関に相談することが重要です。
顎関節症の理解を深め、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できるでしょう。

歯列矯正が有効な理由と注意点

歯列矯正は、顎関節症に対する有効な治療方法のひとつとして注目されています。
その理由はいくつかありますが、特に噛み合わせの改善が顎関節に与える影響が大きいからです。

 

まず、噛み合わせが悪いと、顎関節に不均等な力がかかることがあります。
この不均等さが、顎関節症の症状を引き起こす原因となります。
歯列矯正では、歯の位置や方向を修正し、理想的な噛み合わせを目指します。
歯が正しい位置に並ぶことで、顎への負担が軽減され、結果として顎関節の痛みや機能障害が和らぐ可能性があります。

 

しかし、噛み合わせの悪さが関係していないケースも多くありますので、顎関節症の治療を主目的とした歯列矯正治療を行うかどうかは、慎重に判断する必要があります。
必要十分な口腔内、顎関節の検査と、治療経験と知識が豊富な矯正歯科専門医の診断のもと、患者さまご自身でも、しっかりとご確認することが大切です。

矯正治療は長期間に及ぶため、顎関節症に対して治療において、即効性を期待できないのものです。
そのため、まずは、即効性の期待できるスプリント療法がお勧めですが、こちらは次の章でお伝えしてまいります。

どんな治療法があるの？

・スプリント療法
・理学療法
・薬物療法
・生活指導

まず、前提として、顎関節症は安静にしていれば、経過が良好な疾患ですので、口を大きく開けたりせずに、顎に負担がかからないように安静にすることが大切です。
それでも痛みがある場合は、消炎鎮痛剤や筋弛緩薬などの服薬で痛みを緩和させます。
大体のケースで、これらの治療経過で症状は治まってきます。

少し症状が長引く場合には、スプリント療法を行います。
スプリント呼ばれるマウスピースを就寝時に装着することによって、噛み合わせを安定させ、歯や顎関節にかかる負荷を軽減します。

また、これらの治療方法と合わせて、口内や顎関節のマッサージやストレッチを行う理学療法・運動療法や、生活習慣に問題点があるようであれば改善を組み合わせて、治療を行います。

顎関節症の治療症例