歯科医師を志されたきっかけは?
父が神戸市内で歯科医院を開業していましたので、歯科医師のしごとぶりについて触れておりました。
ただ、小中学生の頃は大の電気マニアで、ラジオやアンプ、無線機などをつくり、楽しむような子どもでした。
将来は工学部に進み、電機関係の仕事に就きたいなと思っていたんですが、高校生になって将来のことを熟考し、歯科医師の道を選びました。
父の後を継ぐという意識はそれほどなかったのですが、手先が器用なので、歯科医師に向いているとは感じていました。
歯科矯正治療に関心を持たれたきっかけは?
私が大学に入った頃の歯医者といえば、虫歯治療というイメージがあり、虫歯になれば、歯医者に治療に訪れるという、患者さんが非常に多くいらっしゃいました。
しかし、私が考える歯科治療は、できてしまった虫歯を治療することだけではなく、自分の歯の状態を整えて、生涯しっかりと噛めるようにしていくことだと考えていたんです。そこで、矯正歯科に関心を持つようになっていきました。
歯学部を卒業すると、削ったり、詰めたり、入れ歯を作ったりという一般的な治療は一通りできるようになります。
しかし、矯正については、大学ではそれほど詳しく習うことができず、大学卒業後に医局に入局して、臨床の研鑽を積むのが普通です。大阪大学歯学部で、当時40人ほどの同級生の中で矯正を選んだのは私ひとりでした。
アメリカの大学に留学されたのも矯正歯科を学ぶ目的でしたか?
基本的な歯科矯正治療の方法に、アメリカ発祥の「エッジワイズ法」があります。
これは歯にブラケットと呼ばれる小さな装置を着けて、細いワイヤーを通し、歯並び・噛み合わせを整えていくという、よく知られている方法ですね。
当時、まだこのエッジワイズ法が、日本に正式にはほとんど紹介されていなかったので、現地で学ぶことにしたのです。
現地で開業医としてやっていける知識と技術を修得できる2年間の大学院のコースがあり、朝から晩まで、みっちりとしごかれました。
基準を満たさない評価点を取ると、即退学という厳しい環境でしたが、おかげでしっかりと学べました。
帰国後は母校でエッジワイズ法の普及や後進の育成に力を注ぎました。
その頃から外科的な矯正治療も手がけられるようになったのですか?
そうですね。アメリカでのもうひとつの大きな収穫は、外科的矯正治療に出会ったということです。
外科医師による外科手術と、矯正歯科医師によるエッジワイズ法の治療を組み合わせたもので、極端な受け口など顎のサイズや形、位置に大きな問題がある場合に適用される治療法です。
歯並びや噛み合わせの改善が図れるとともに、見た目にも変化があり、長年のコンプレックスから解放される可能性も期待できます。
当然、国内ではほとんど知られていませんでしたから、「これを日本に持って帰らなくては」と熱心に学びました。
母校に戻ると、すぐに口腔外科の先生方と外科的矯正治療のチームを結成して、臨床を開始しました。
矯正歯科クリニックを開業されたきっかけは?
今まで培ってきた知識や経験を、診療という形で、地域の方へ届けたいと思い、歯科矯正専門のクリニックを開業することにしました。
開業する場所として、地元である神戸以外は考えませんでしたね。
神戸は自分が生まれ育った街で、海にも山にも近く、本当に良いところです。
父親が神戸で開業していたので、地域の先生方とのネットワークがあるのも強みでした。
どんな患者さんが来られますか?
お子さまからご年配の方まで、幅広い年齢層の方が受診されます。
症状によっては、就学前のお子さんの矯正もあれば、60代の方の部分的矯正まで、また治療方法も様々です。
当院では、歯の表側から装置を着ける標準的な矯正、裏側から着ける矯正(リンガル矯正)、マウスピース型装置を用いた矯正といった代表的な方法に加え、アンカーと呼ばれる小さなネジを一定期間顎の骨に埋め込んで、より正確さにこだわった治療を行うインプラント矯正、さらに外科的矯正治療まで、幅広い方法に対応しています。
それぞれにメリット、デメリットがあるので、患者さんの症状・年齢・ご要望に応じて、どの方法が適しているかを判断していきます。
お子さんの矯正についてのお考えは?
すぐ矯正を行う必要があるケースと、治療を行っても将来的に再治療が必要になるケースがあり、その見極めが大切です。
例えば、顎のずれがある場合は、治療は早いほうが良いと思います。
通常、前歯が大人の歯に替わっていく7~8歳というのが治療開始の目安ですが、受け口など幼稚園の頃から治療したほうが良い場合もあるので、気になる場合は早めに診てもらうことが大切です。
その後は、永久歯が生え揃う中学入学の頃が目安ですね。
最近は、中学生になると、勉強やクラブ活動が忙しいので、小学生のうちに矯正が終わることを希望される方もいらっしゃいます。
しかし、一生使う大切な歯である前歯から7番目の12歳臼歯(第2大臼歯)までは、中学生になって、すべて生え揃うので、最終的な矯正はそれ以降に行うのが普通です。
大人の矯正についてはいかがでしょうか?
大人の場合は、特に歯周病の見地から、矯正治療計画に注意深い判断が必要となります。大人の歯科矯正では、裏側矯正(リンガル矯正)を希望される方が多くいらっしゃいます。
外から装置が見えないという点が大きな利点ですが、舌が矯正装置に当たって不都合が生じる場合があります。
例えば、舌を突き出す癖がある患者さんでは裏側矯正にすると、舌が当たって痛く、不快という場合がございます。
症状や口腔内の状況に応じて、適切な治療法を選択することが大切だと思います。
患者さんと接する際には どんなことを心がけていらっしゃいますか?
動画なども交えて、丁寧に分かりやすい説明を大事にしており、特に最初のカウンセリングの際には、話した内容を、私が書き留めるようにして、そのコピーを持ち帰っていただきます。
患者さん自身がメモを取る必要もなく、聞くことに集中して理解を深めることができると思います。
吉田矯正歯科クリニックでは 顎変形症治療に関連する矯正治療を 保険診療で受けることができるそうですね!?
はい。当院は保険診療の施設基準を満たしております。
これにより、受け口や顎のずれなど顎変形症の治療を受けられる患者さんには、手術も矯正治療も、すべて保険診療が適用されます。
このことをご存じない患者さんがまだまだ多くいらっしゃるのですが、保険診療が適用されることは大きなメリットです。
悩んでおられる方は、ぜひ相談いただければと思いますね。
今後の目標を教えてください。
歯科矯正治療の世界も日進月歩で、近年では歯形をスキャンしたデジタルデータを、海外メーカーに送って、ブラケットをオーダーするというシステムも実用化されています。
矯正の方法についても、より効率良く、歯の位置を動かせる方法も開発されつつあります。
こうした新しいものも積極的に取り入れながらも、これからも、出来る限り患者さんの負担を少なく、笑顔で幸せな日々を送れるような矯正歯科治療を提供していきたいと心から思っております。
最後に皆さまにメッセージを!
矯正歯科治療は、口の健康や全身の健康に良い影響をもたらし、生活の質を高めるために役立ちます。
当院の患者さんの中には、歯に対する意識が変わり、歯を大事にするようになったという方や、自信が持てるようになって、何に対してもポジティブにチャレンジすることができるようになったという方が多くいらっしゃいます。
少しでも悩んでおられるのであれば、気楽にご相談ください。